創業をする上で「個人事業」と「法人(会社)」では、大きな違いがあります。
税金面、経営面、手続き面などで、どちらがいいのか大きく悩むところです。
会社は様々な種類があり、株式会社、合同会社、一般社団法人、学校法人、NPO法人などすべての名称を合わせると、両の指では数えることが出来ません。
会社はそれぞれの法律に基づいて取り扱いが決まっており、事業の相性によってどの種類の法人が適切なのかを考えなくてはなりません。
法人の種類 | 関係法律 | 利益の分配 |
---|---|---|
株式会社 | 商法・会社法 | 営利型 |
合同会社 | ||
合資会社 | ||
合名会社 | ||
一般社団法人 | 一般社団法人及び 一般財団法人に関する法律 (一般社団・一般財団法人法) |
営利型と非営利型 |
公益財団法人 | ||
特定非営利活動法人 (NPO法人) |
特定非営利活動促進法 (NPO法) |
非営利型 |
社会福祉法 | 社会福祉法人 | |
私立学校法 | 学校法人 | |
医療法 | 医療法人 | |
宗教法人法 | 宗教法人 |
※有限会社は現在設立することは出来ません。
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)に、特例有限会社として現在、取り扱いがなされています。
上図のほかにも法人の形態はありますが、メジャーな形態の法人を抜粋して記載しました。大きく分けて、営利法人と非営利法人に分けることが出来ます。簡単に言うと出資者(株主)に利益を分配(株主配当など)するかしないかに大きな違いがあります。
営利法人は、利益を分配しますが、非営利法人は分配しません。誤解しやすいですが、非営利法人は利益の分配は出来ませんが、収益は上げても構いません。利益を分配することと、収益を上げることは別物です。
設立時 | ||||||
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株式会社 | 合同会社(LLC) | 合名会社 | 合資会社 | |||
責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 | 直接無限責任 | 直接無限・ 直接有限責任 |
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最低出資金 | 1円から 設立できる |
1円から 設立できる |
1円から 設立できる |
1円から 設立できる |
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出資者の数 | 1人から 設立できる |
1人から 設立できる |
1人から 設立できる |
2人から 設立できる |
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出資できる目的 | 金銭、物 (その他財産) |
金銭、物 (その他財産) |
金銭、物、 信用、労務 |
無限責任社員は 合名会社と同一 有限責任社員は 合同会社と同一 |
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定款の認証 | 必要 (公証人認証費用: 5万円) |
不要 | 不要 | 不要 | ||
株式の発行 | 出来る | 出来ない | 出来ない | 出来ない |
運営面 | ||||||
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株式会社 | 合同会社(LLC) | 合名会社 | 合資会社 | |||
決算公告 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 | ||
役員の任期 | 最長10年 | なし | なし | なし | ||
利益や権限の配分 | 出資額に比例 | 自由 | 自由 | 自由 | ||
意思決定機関 | 株主総会 | 全社員の同意 | 全社員の同意 | 全社員の同意 | ||
代表機関 | 代表取締役 | 原則:社員 | 原則:社員 | 原則:社員 |
費用面 | ||||||
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株式会社 | 合同会社(LLC) | 合名会社 | 合資会社 | |||
公証人による 定款認証 ※電子証明書 の場合、印紙税 4万円が不要 |
印紙税4万円 認証費用5万円 |
印紙税4万円 | 印紙税4万円 | 印紙税4万円 | ||
登録免許税 | 15万円 | 6万円 | 6万円 | 6万円 | ||
印鑑等の作成 | 2万円前後 | 2万円前後 | 2万円前後 | 2万円前後 | ||
意思決定機関 | 株主総会 | 全社員の同意 | 全社員の同意 | 全社員の同意 | ||
合計 | 26万円 | 12万円 | 12万円 | 12万円 |
※商法・会社法で定められているもので、有限責任事業組合(LLP)という形態もあります。①有限責任制②利益や権限の配分が出資額に比例されない③構成員課税(出資者に直接課税される)などの特徴があり、自由でスピード感がある経営が出来ます。
ただし、法人格はありません。一般的に複数の法人等が共同事業をしたり、ベンチャー事業に向いているといえます。
上図に、4つの法人のメリット、デメリットをまとめました。
上述したとおり、2006年に会社法が大きく改正され、有限会社は設立できなくなりました。この改正で、合同会社という新しい形態が生まれ、株式会社に比べ設立費用や運営面でメリットがあり、特にベンチャー企業に向いています。
合同会社は、ITの普及も伴ってか、5年間で2倍以上設立数が伸びており、社会的認知度も高まってきています。
株式会社は、言わずもながら、社会的認知度が一番高い会社形態です。
株式会社も、役員の不祥事などが度重なる社会情勢もあり、2015年に会社法が改正されました。委員会設置会社など、設置できる機関が多数あり、事業の規模に応じて設定出来るメリットがあります。
一般社団(財団)・公益社団(財団)法人ですが、もともとこの形態は、民法にいわゆる民法法人として規定されていました。民法法人は、非営利法人ではありましたが、公益かそうでないかで、法律の抜け穴的なところも多く当時の社会情勢もあり、2006年に改正されました。現在は、新しく制定された一般社団・一般財団法人法と公益法人認定法にそれぞれ規定されています。
社団と財団の違いについてですが、社団は「人」を中心とした法人で、いわゆる株式会社などと同じ様に事業目的を決め、それに向かって運営していくというものです。
財団は「財産」を中心とした法人で、設立時には最低300万円の拠出が必要です。拠出した財産を、取り決めた目的のために財産運用していくというものです。
例えば、自分が死ぬ前に財団法人を設立して、相続財産を一定の目的のために運用していくなどの活用方法があります。家族信託などでも活用されている事例もあります。
一般社団法人は、NPO法人とは違い、事業の目的に縛りはなく、どのような事業でも登記の目的に記すことが出来ます。よって、営利型と非営利型に分けられ、主に税制上で取り扱いが異なってきます。
一般社団(財団)法人のうち、公益目的事業を主な目的としている場合は、行政庁から公益認定を受けることにより、公益社団(財団)法人となります。公益目的事業とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げるものであって、不特定多数のものの利益の増進に寄与するものをいいます。
公益法人認定法別表には23個の公益事業の内容が記載されています。公益認定の効果として、一定の税優遇措置を受けることが出来ます。
公益社団(財団)法人 | 公益認定を受けていない 一般社団・財団法人 | ||
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非営利型法人 | 非営利型法人 以外の法人 | ||
法人税法上の法人区分 | 公益法人等 | 普通法人 | |
課税所得の範囲 | 収益事業から生じた所得が課税対象(注) | 全ての所得が 課税対象 |
(注)公益社団(財団)法人の公益目的事業から生じた所得は課税対象になりません。
一般社団法人 | 公益社団法人 | |
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設立時の基金 | 不要 | 不要 |
設立者数 | 2人以上 | 2人以上 |
理事 | 1人以上 | 3人以上 |
理事会 | 任意 | 必須 |
登録免許税 | 6万円 | 6万円 |
監督の制度 | なし | 都道府県庁 又は内閣府 |
行政庁への報告義務 | なし | 毎年提出 |
NPO法人のデメリットは、運営をする上で事務作業が大変になることです。NPO法人は、毎年、都道府県へ事業報告を行わなければなりません。事務的にそれほど大きな負担になるものではありませんが、事業報告の提出が一定期間なかったりするとNPOの認証が取り消されるなどのペナルティがあるので気をつけなければなりません。
それから、会計書類についてですが、税制上のメリットがある分、精度の高い会計書類を作る必要があります。NPOの新会計基準というものがあり、このガイドラインの基準に沿って会計書類を管理していくことになります。NPO法人を解散する場合ですが、残った財産については手元に戻って来ず、法律に規定されている団体に帰属します。規定されている帰属先は以下の通りです。
NPO法人が、認定を受けると、認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)となります。認定NPO法人になると税制上のメリットがあります。認定を受けるためには、ハードルが高い要件があります。特に重要な要件のひとつに、パブリックサポートテスト(PST)基準というものがあり、次の3つの基準のいずれかをクリアする必要があります。
他にも、設立の日から1年を超える期間が経過してることなどの要件があります。
認定NPO法人は、PST基準が厳しいこともあり、平成24年の改正で仮認定NPO法人の制度がはじまりました。これは、PST基準の要件がなく、他の要件を満たせば仮認定の期間(3年間)は税制上の優遇を受けられるというものです。そして、この仮認定の期間にPST基準を満たすことで、改めて認定を申請するという階段的なシステムです。
収益事業 | 収益事業以外 | |
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一般社団(財団)法人 営利型 | 課税 | - |
一般社団(財団)法人 非営利型 | 課税 | 非課税 |
NPO法人 | 課税 | 非課税 |
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